ヒト長期投与(安全性)試験の用量設定法ガイドライン発行に寄せて
ヒト長期投与(安全性)試験の用量設定法ガイドライン検討委員会
委員長 藤井 まき子
平成26年11月に医薬部外品等の承認申請の見直しが行われ、医薬部外品の承認申請書に「ヒトにおける長期投与(安全性)試験に関する資料」が求められるようになった。この背景には4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール(商品名ロドデノール)配合美白化粧品(医薬部外品)で生じた白斑様症状が、製造販売承認時もしくは製造販売後調査で把握することができなかったことがあり、従来の試験や調査では見逃す可能性のある有害事象を事前に察知すべく新たに設定されたものである。
さらに、平成29年4月に「医薬部外品に関する臨床評価ガイドライン」が発出された。この中で「ヒト長期投与(安全性)試験」は、実際の使用方法における長期投与時の安全性を評価することが目的であり、試験デザインとして、12か月間100例以上、観察・評価を皮膚科専門医が行うこと、指標として「有効成分の皮膚内濃度」を考慮すると記載されている。
しかし、医薬部外品有効成分の皮膚内濃度を正確に測ることは難しく、重ね使用または同時使用をも考慮した実使用時の皮膚内濃度測定法は存在しない。そこで、日本香粧品学会は平成29年4月に日本化粧品工業連合会と共同で、実際の使用方法から想定され得る皮膚内濃度を考慮したヒト長期投与(安全性)試験における用量設定の考え方を検討することとし、薬学基礎分野、行政経験者、皮膚科医、企業研究者からなる委員会を立ち上げた。そして、有効成分の皮膚内動態、消費者の化粧行動、効率的で確実な安全性保証方法、消費者に対する説明責任など2年余りにわたる議論を重ね、新たに開発した試験法については8施設において検証実験を行った。さらに、関係各方面のご意見も伺い、ここに化粧品機能評価法ガイドラインの1つとして「ヒト長期投与(安全性)試験の用量設定法ガイドライン」を作成した。
本ガイドラインは用量設定の考え方を示す「本文」、ヒト長期投与(安全性)試験の省略を考慮するための比較試験法を示す「附則」、皮膚内濃度の基本的な考え方を示す「付録」の3部構成となっている。一方、「附則」に示した比較試験法の検証実験報告は、日本香粧品学会誌に投稿しているので、本ガイドラインと合わせてご確認いただきたい。
健康で美しい皮膚を保つための化粧品・医薬部外品への消費者の期待は大きい。本学会では平成18年に化粧品機能評価法ガイドラインを策定し、消費者の期待に応える機能を持つ化粧品・医薬部外品の研究開発を支える有用性評価について評価基準を公表し、香粧品の発展に寄与してきた。本ガイドラインは、消費者に提供する基本機能として特に重要である安全性保証のための試験実施における用量設定の考え方を示したものである。消費者の期待に応え、安心して使用できる新たな製品開発に役立つことを願っている。
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