化粧品機能評価法ガイドライン

化粧品機能評価法ガイドライン策定の経緯

化粧品機能評価法検討委員会 委員長 川島 眞

高齢化社会を迎え,シワ,シミ等の老徴への対策を求める消費者の期待は大きい。健康な肌をより良く保つための化粧品(医薬部外品を含む)は,これらの期待と要望に対応できるよう,その機能をさらに高めるべく,研究開発されてきている。それに伴って有効性を評価する技法や機器も大きく進歩した。しかし一方で,有用性に関するデータは数多く見られるものの,その評価方法は各社それぞれであり,消費者のみならず業界からも評価基準の統一の必要性が指摘されてきた。

日本香粧品学会ではこれらの現状を踏まえ,平成12年よりシンポジウム,セミナーにおいて有効性評価法の基準,化粧品の効能と規制,エビデンスに基づく化粧品等のテーマで討論を重ねてきた。さらに,平成15年には原田昭太郎理事長の方針のもと,客観性のある評価法確立を目的とする化粧品機能評価法検討委員会を発足させ,学会をあげてこのテーマに取組むことが理事会において決定された。そして各委員会が,皮膚科医,薬学研究者,行政出身者,化粧品研究者である当学会員により組織された。

平成16年2月14日,化粧品機能評価法検討委員会とそのもとに設置された抗老化機能評価専門委員会,美白機能評価専門委員会,サンスクリーン機能評価専門委員会,安全性評価専門委員会の4専門委員会の委員が一堂に会し,委員会の方向性と目標について確認した。その後,各専門委員会とワーキンググループは熱心な討議を重ね,平成17年第30回学術大会において中間報告を,本年6月に開催された第31回学術大会においては,本年1月に公表したガイドライン(案)への会員,および業界有識者の意見を盛り込んだ最終報告を発表した。

評価法ガイドラインは,当然のことながら,科学的,客観的であり,かつ再現性があるものでなくてはならない。4つのテーマを掲げたガイドラインに共通する考え方として以下がある。まず,試験は第三者機関における実施,または第三者機関による試料割付,あるいは試験条件を一定に保つなど,客観性と均質性保持を基本条件とした。また,目視評価および安全性評価については皮膚科専門医,あるいは同等の臨床経験を持つ皮膚科医ないし trained expert(各機能評価に熟達した研究者)とした。計測等に使用する機器等は現在入手可能なものであり,国際的にも化粧品評価に使用されているものとした。また,評価の客観性をさらに確かなものにするために,画像補正用基準物や肌色色票などを補助手段として使用することを推奨した。

各々のガイドラインの概要を下記に記す。

〈新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン〉

抗シワ機能評価試験ガイドラインでは,化粧品,医薬部外品に分けてガイドラインを作成した。シワグレード標準を示す写真を用い,目視評価および写真評価を実施し,機器測定によるシワ計測の結果と合わせて有効性の判定を実施することとした。化粧品では塗布群,無塗布群の比較において,目視評価あるいは写真評価,機器評価のいずれかでシワ改善の変化に有意差が見られることとした。医薬部外品では有効成分配合製剤塗布群とプラセボ塗布群との二重遮蔽法による比較において,目視評価あるいは写真評価,および機器測定の両方においてシワ改善の変化が有意に確認できることとした。試験期間は,化粧品では2週間以上,医薬部外品では2カ月以上とした。この評価試験の対象となる化粧品は「乾燥によるシワをめだたなくする」製品であり,医薬部外品は「シワを改善する」ことを目的とした製品である。写真評価を実施するために『シワ写真撮影ガイドライン』,機器によるシワ測定のために『シワ測定法ガイドライン』,またシワグレード測定のために『シワグレード標準』が資料として添付されている。

〈新規効能取得のための医薬部外品美白機能評価試験ガイドライン〉

本ガイドラインによる有効性判定は,有効成分配合製剤塗布群とプラセボ塗布群との二重遮蔽法による比較において,目視または写真評価において有意差があり,かつ機器測定の結果が目視評価または写真評価と矛盾しない場合を有効性ありと判定することとした。試験期間は美白製剤の作用機序を考え最低1カ月以上とした。対象とする製品は,「色素沈着をおだやかに改善していく」ことを目的とした医薬部外品である。機器測定のために『色素沈着測定法ガイダンス』が機器測定の資料として添付されている。

〈サンスクリーン製品の新規効能表現に関するガイドライン〉

本ガイドラインは他のガイドラインと違って測定法を示すものではない。測定は既に制定されているSPF測定法基準およびUVA防止効果測定基準を用いることとした。紫外線防御に関する文献調査の結果,光老化を予防するためにはUVA防止効果があり,かつ SPF 15 以上の製品が必要であることがわかった。サンスクリーン剤が光老化の防止に有効であることは皮膚科領域では十分に認知されている。ただし,その根拠となるSPFおよびUVA測定については,客観性が重要であることから,これらの測定結果を確認する国内の第三者機関の設置も視野に入れる必要がある。

〈安全性試験ガイドライン〉

本ガイドラインにおいては,今回の評価法がシワの改善や防止,色素沈着の改善といった,現行の規制の範囲よりも踏み込んだ有効性を確認するものであり,これまでのような化粧品の作用は角層レベルまでとするとらえ方ではすまないと考え,ヒトにおける安全性評価を製剤において実施することとし,その方向性を示した。成分の安全性については従来どおりの定められた安全性確認を必要とすることは言うまでもない。

これまで述べてきたように今回のガイドライン策定は日本香粧品学会の総力をあげての作業であった。50名を超える皮膚科医,薬学研究者,行政出身者,化粧品研究者の皆様の献身的な協力があったからこそ,今回の策定および本書の刊行が可能になったと考えている。特に,短い期間内にガイドラインを完成させるという困難な作業を引き受けてくださった松本義也委員長(抗老化機能評価専門委員会),花田勝美委員長(美白機能評価専門委員会),松尾聿朗委員長(サンスクリーン機能評価専門委員会),飯島正文委員長(安全性評価専門委員会)には心よりお礼を申し上げたい。

今回のガイドライン策定は化粧品の新たな有用性評価の第一歩である。今後は,新しい知見に合わせた見直しや,国際的な動向も踏まえつつ議論を積み重ねる必要もあろう。また,試験に従事する専門家の知識と技能レベルを保つための教育も必要になろう。本ガイドラインが,会員各位,関係各位の忌憚のないご意見,ご協力によりさらに完成したものとなり,最終的には消費者に益することを切に祈念するものである。

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